周回遅れのフィンテック。日本のIT企業の実力は?

 軽減税率適用に連動するのが「フィンテック」。なにかといえば、バズワード。Web2.0レベルに守備範囲が広く、ビッグデータ並みに明確な定義がありません。

 ザックリと言えば

「金融の電子情報化」

 であり、ネット証券やネットバンキングはもちろん、解釈によっては、おサイフケータイや、米国スクエア社が提供する、スマホを使った決裁サービスまで含まれます。

 お金とは、そもそも「(貨幣)価値」という「情報」に過ぎず、一万円札の印刷コストは約20円で、実体的な価値を意味しません。みんなが「1万円だぁ」という情報を信じているから、福沢諭吉は偉そうに見え、昭和後期の小学生は聖徳太子に威厳を感じたのです。

 いま振り返ると、紙幣の歴史上の人物や、憲政の偉人から、学者や作家への移行とは、ジャパンディスカウントという大きなうねりだったのでしょうかね。

 近代日本の思想・言論界の巨人とは言え、「日本国」を代表し、国際通貨である「YEN」を体現するとは言いがたく、伊藤博文が「落選」したことを、近隣諸国への配慮とする解説もありますが、それが本当ならいらぬ配慮というか、図案が変更されたのが昭和59年(1984年)ですから、「近隣諸国」が、朝日新聞の報道と阿吽の呼吸で日本を攻撃し始めたタイミングに重なります。

 半歩退けば一歩踏み込む中華文明圏相手への愚策というか、反日工作だったのではと邪推します。

 話しはフィンテック。

 お金と電子情報との親和性はとても高く、フィンテックという言葉はともかく、金融の電子化の流れは加速することはあっても、撤退することはあり得ません。

 ところがこのフィンテックにおいて、IT大国を誇るはずの我が国は周回遅れ。軽減税率を巡る自公の折衝で、自民党の谷垣幹事長が、準備不足を理由に何色を示した論拠のひとつです。

 軽減税率導入に必須となるとされるのが「インボイス(方式)」。軽減税率とはすなわち「複数税率」であり、消費税とは、お客から受け取った消費税から、仕入れで支払った消費税を差し引いた残金を、事業者が納める仕組みになっています。

 ここでざっくりと、消費税の納税方法を紹介します。

 コンビニで1000円の弁当を販売したとき、現在想定されている税率では8%で、販売時に80円をお客から徴収します。お弁当の具材の仕入れが300円なら、食品や加工品の税率は8%で24円。ポリエチレンの弁当箱や、ビニール袋その他諸々に200円かかるとして、こちらが10%で20円。するとコンビニが税務署に納める消費税は

 80−24−20=36円

 の36円となります。

 経理の概念的には

 80−(24+20)=36円

 こんな感じ。括弧内がコンビニの事務処理の部分。

 インボイスとは納品伝票などに、「税額」を明示する方法を指します。現時点では猶予期間が設けられる見通しですが、そもそも論で、個別商品の税額表示ができないシステムが、このIT大国の一角であるはずの日本で、そこの与党幹事長が、予定通りでも1年半後の導入にも関わらず

「システムが間に合わない」

 と平然と言ってのける時点で、フィンテックの遅れ具合が分かるというものです。

 すでに述べたように、フィンテックという言葉が定義するところは広く、おサイフケータイや、パスモなどのICカードの消費者向けの実用分野においては、日本は世界のトップランナーです。

 自販機との連携や、コンビニでの支払い、またガラケーと自虐をしますが、超小型携帯万能通信端末により磨かれた技術とサービスは世界随一。

 オモテナシと書くと、あの元フジテレビ社員を想像し、理由もなくイラッとするのですが、ともかく変態的なほどサービスに固執する国民性から、対消費者向けのフィンテックは進んでいるのですが、ビジネス用途は20世紀レベル。

 だから、インボイス如きに慌てます。

 しかし、物流レベルでは実現可能。なぜなら、いまどきほぼ全ての物流業者はPOSや、それに類する管理システムを導入しており、手書きの伝票のレベルはレアケース。いわゆる「単品管理」ができるシステムを導入しているということは、複数税率にも対応しています。

 限られたスペースから、単品レベルでの在庫管理が求められ、それを実現してきたコンビニが、国内におけるPOSシステムのトップランナーといって良いでしょう。そのコンビニは、すでに消費税導入時から複数税率に対応しています。

 消費税導入から27年を経て、途中に訪れたIT革命を経た、他業界のPOSや物流管理システムが、27年前のコンビニに劣ることなどあり得ません。

 ところが、これらの情報が、経理会計に接続していないのです。いまだに「伝票」や「レシート」です。

 「電子納品書(請求書)」なるものがありますが、これは紙がPDFデータに置き換わっただけに過ぎません。印刷費や郵便料金を削減できるだけで、フィンテックではありません。

 フィンテックへの対応のためか、銀行業にかけられた規制を緩和し、来年からIT企業への出資ができるようになっても、状況が激変するかに疑問が残ります。

 金融分野は堅実性を求める習性があり、必然的に保守化してしまうという職種で、さらにそれを是とする国民性が抱える構造的な問題。

 そこから前例主義にはまり、従来のやり方に固執するあまり、新しいテクノロジーへの乗り換えが遅れ今に至ります。IT企業を買収したからと行って、先進的な子会社の提案を、認める度量が、日本の銀行にあるかということ。

 また、革新的なフィンテックが生まれたとして、それを規制官庁が認める姿が見えてはきません。

 物理的な人手不足も心配の種。

 日本のIT業界の技術者不足は深刻で、20世紀中には、利用者がいなくなると予言されていた「COBOL」というプログラム言語がいまだ現役で、それが故に「使い手」が極度に少なく、あちらこちらでトラブルの火種がくすぶっているとは、現役のベテランシステム開発者。

 プログラム言語はC、BASIC等々いくつもあり、さらに同じ言語でも世代があり、関連性はあっても、そのまま使えず、多くのプログラマは、それぞれの言語の専門家になるものです。これをそれぞれの「使い手」と呼びます。

 比較的習得が容易な、Web系のプログラマのなかには、複数言語をマスターしているものもいますが、これらはWebという限定条件に特化しているので、その言語はWeb以外の開発環境に適してはいません。

 というよりも、いまプログラマを目指すものの多くが、Web系か、ロボット制御などで、なにより、スマホゲームも含めたWeb系の方が、給料水準が高く待遇も良く、最先端の夢が溢れるならロボットで、やはり勘定系のシステムではないという悪循環。

 そこで銀行の出資規制を見直して「テコ入れ」を図るわけですが、果たして「人材」を確保できるか。激しい人手不足を踏まえれば前途は多難です。

 また、会計処理のレベルのプログラム開発は簡単。整合性を取り、安定稼働を目指し、万が一のときのバックアップシステムや、即時復旧など、やることは無限のレベルにありつつ、ミスが許されないとはいえ、それぞれの設計はさほど難しくはありません。

 というより、会計処理の基本を「複式簿記」とするなら、12世紀にはすでに生まれていた概念であり、いまでも人間が「手書き」でやっていることを、電算処理させるだけに過ぎません。

 登録した内容が、別の結果に連動する「リレーショナルデータベース」を理解できるプログラマなら、システムの概要を簡単にイメージできることでしょう。

 プログラマの経験者としての率直な感想は「おもしろくない」。まともなプログラマという人種を動かすのは知的好奇心。知的好奇心があまり刺激されないアルゴリズム。そして優秀な技術者が寄ってこないジャンルが、日本がもっとも遅れている「フィンテック」です。

 「みずほ銀行」のシステム統合が、いまだそのゴールが見えないことに代表されます。巨大システムの統合だから大変だ、とは言い訳になりません。

 単純な規模だけでみても、みずほ以上に大きな銀行は多く、世界を股にかけるグローバルバンクも沢山あります。そんななか、システム統合が進展しないのは、内部での主導権争いによるもので、システム開発ではなく、人事レベルの話しだとは匿名掲示板情報。

 とにかく会計や経理については、先進国と名乗るには恥ずかしいレベルなのです。コンビニが27年前に実現している、単品レベルので税率管理ができない会計ソフトがいまだに大手を振って流通しています。

 有名なソフトである「弥生会計」は非課税、内税、外税の区別があるだけで、税率は一括でいて、自分で設定できません。

 最先端を気取るネットとて同じ。

 ざっと調べた限りですが、単品レベルで税率を設定できるのは、海外生まれの「ZenCart」。海外の先進国では、複数税率は常識なので当然と言えば当然です。国内では「EC-CUBE」が、選択的に設定できるようで、オムニチャネル対応のシステムなら、複数税率に対応しているのは、先のコンビニと同じです。

 巨大なショッピングモールを背景に「経済圏」と豪語していても、税の扱いは「一括」。

 政策を決定するときに多数派の意見を参考にするのは、民主主義の理屈に添ったモノですが、遅れている会計システム、決済プログラムを利用しているところからヒアリングすれば、

「インボイスは難しい」

 と答えが返ってくるのは自明です。

 多数派が常に正しいとは限らない、というより、日本の会計、経理、そしてネット通販の決済においても、

「できない生徒に合わせる授業」

 となっているからです。

 資本主義社会における経済は、自由競争を原則とします。インボイスの影響を受けるのは、商売人であり、これに対応できない企業は淘汰され、できる企業が生き残るのが当然。

 つまり、世界レベルのフィンテックにキャッチアップするには、インボイスの導入を余儀なくされる軽減税率は「追い風」になるのですが、どうやら「猶予期間」とやらが導入される気配で、このまま行くと周回遅れが2周回遅れになる前に、またぞろ「世界のフィンテック企業」が輸入されて、国内企業を蹂躙することでしょう。

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